本文へ移動

児童思春期外来コラム

児童思春期コラム

発達障害の診断について コラム

2023-04-10
発達障害が巷にあふれています。「あの人は変わってるし、発達障害なんじゃないの?」等の声が聞かれたり、インターネット上にもチェックリストをはじめ、「アスペ」などネットでは他人を卑下する言葉として使われ、偏見増長に寄与してしまっています。学校現場でも暴れたり、クラスメイトと問題を起こすと「発達障害ではないか」という声が聞こえてきます。片付けができないだけでも「発達障害」・・・ なんでも発達障害です。
精神科、特に児童精神科に対し、問題行動を何でも発達障害と診断して医療に巻き込む、そして「薬を出して儲ける」状態であるとして「発達障害バブル」と批判する声も多く聞かれます。我々はこうした批判を真摯に受け止め、発達障害とは何かを考える必要があると考えています。
確かに「変わっている」「暴れる」「片付けができない」こうした人たちの中に「発達障害」の人はいます。しかしこれらイコール発達障害ではありません。片付けができない子供はたくさんいますが、きちんとする必要性を感じなければ片づけないし、友達、交際相手が部屋に来るとなると片付けるのであればそれは「片付けられない」ではありません。片付けについても片付けの必要性は認めたうえで実行、遂行機能に問題があることで片付けができないのが発達障害です。
「暴れる」ことについても背景に障害に基づくコミュニケーションのゆがみ、言葉のとらえ違いであったり、刺激に敏感であったり、衝動性の高さがあるなどが発達障害では認められます。しかし家庭内でのストレスを抱えていたり、虐待されていたり、日頃の友人関係の中でもやもやがあり処理しきれないなどの背景がある場合もあり、発達障害の一言で説明がつくものではありません。
発達障害(特に自閉スペクトラム症やADHD)と考えられる中には環境要因(虐待など)や愛着の問題を抱えているような子供もいます。子どもの問題行動を「発達障害」のみで理解することはできないのです。
発達障害は現時点では血圧計のような客観的な数値化で判断できる材料もなく、採血やCTを撮影することでわかるものでもありません。それに加えさらに上述した背景もあり発達障害の診断は大変難しいものです。子どもの悩みや問題行動を考察する際は発達障害という物差しだけではなく広く心理的要因や家族背景、学校での友人関係など様々な引出しをもって考えていく必要があるのです。
さらには診断はしたとしても本人に告知したほうがいいか、しない方がいいかという問題もあります。この点についてはまた別コラムにてお話したいと思います

医師
TOPへ戻る